トムソン打ち抜き加工の基礎知識(特徴・他工法との比較)

トムソン加工とは

トムソン加工の定義

トムソン加工は、専用の木型とトムソン刃を用いて紙や薄い素材を高精度で型抜きする技術です。この加工法は、パッケージ、封筒、POPディスプレイなど多様な製品に利用されています。

トムソン加工の基本原理

トムソン加工では、木型に溝を掘り、そこにトムソン刃(鉄の刃)を取り付けます。これをプレス機で押し付けることで、材料を指定された形状に切り抜くことができます。穴を開けたり、折り目をつけたり、ミシン目を入れるなど多様な加工が可能です。

トムソン加工の歴史

トムソン加工は、ジョン・S・トムソンによって考案され、その名にちなんで名付けられました。日本では関西で「トムソン加工」、関東では「ビク抜き」と呼ばれることもあります。

トムソン加工の特徴

対応できる形状

トムソン加工は、直線や曲線を含む複雑な形状を高精度で切り抜くことができます。これにより、独自のデザインや細かなパターンを実現することが可能です。

加工精度とコストのバランス

トムソン加工は、初期費用がかかるものの、量産に適した加工方法です。木型の製作には一定のコストが必要ですが、一度作成すれば数万個単位の製品を安定した品質で生産できます。特に、月産1万個以上の生産規模では、1個あたりの製造コストが大幅に低減され、高いコストパフォーマンスを実現できます。また、熟練の技術者による木型の調整や、最新の打ち抜き機の導入により、±0.1mm程度の高精度な加工が可能です。この精度は、パッケージングや工業部品の要求仕様を十分に満たすレベルです。

加工に使用する素材と材料

トムソン加工で扱える素材は多岐にわたります。

素材例:

  • 絶縁紙・絶縁材料系:ファイバー紙、ノーメックス、絶縁テープ・絶縁シート
  • シート・フィルム:PP、PS、PC、PET、ABS
  • 粘着テープ・両面テープ:絶縁テープ、遮光テープ、反射テープ

素材の特性に応じて刃型の角度や押し込み深さを調整することで、精度の高い加工が可能です。特に、材料の厚みや硬度に合わせて最適な刃型を選択することが重要です。

トムソン加工の工程

1. 木型の作成と設計

トムソン加工の最初のステップは、木型の作成と設計です。最新のCAD/CAMシステムを活用し、製品の3Dモデルから正確な展開図を作成します。この段階で、材料の特性や収縮率を考慮した寸法補正を行います。木型は主にバーチ材やメープル材などの堅木を使用し、CNCルーターで高精度に加工します。トムソン刃は、用途に応じてさまざまな厚みやサイズのものから選択します。また、切り込み深さの微調整が可能な可動式の刃受けを採用することで、長期間の安定した加工が可能です。

2. 打ち抜き機とプレス機の操作

次に、打ち抜き機またはプレス機を使用して材料を型抜きします。最新の打ち抜き機は、細かな単位でプレス圧力を制御できるため、材料に応じた最適な圧力設定を実現します。加工速度は材料や形状にもよりますが、通常毎分複数回ストロークが可能で、高い生産性を実現します。また、自動供給装置を組み合わせることで、作業効率を大幅に向上させることができます。

3. 加工後の保管と納品

加工済み製品は、専用の検査治具を使用して寸法精度や切断面の品質を確認します。特に、電子部品向けの製品等では全数検査を実施することもあります。製品は静電気や湿気による品質劣化を防ぐため、制御された環境で保管されます。温度や湿度が一定範囲に保たれた環境の維持が推奨されます。納品時には、製品の特性に応じて緩衝材や防湿袋を使用し、輸送中の品質維持を図ります。

他の加工方法との比較

ビク加工との違い

ビク加工も紙や薄い素材を型抜きする技術で、基本的な原理はトムソン加工と同じです。地域によって名称が異なり、関西では「トムソン加工」、関東では「ビク加工」と呼ばれることが多くあります。

レーザー加工との比較

レーザー加工は、レーザービームを使用して材料を切断する方法です。レーザー加工は、非常に高い精度と複雑な形状を実現できますが、コストが高くなることが多いです。トムソン加工は、大量生産時のコスト効率が優れています。

レーザー加工と比較した際のトムソン加工の特徴は以下の通りです。

・初期投資:レーザー加工の1/3~1/5程度
・生産速度:大量生産時は2~3倍の処理能力
・材料制約:熱の影響がなく、より多様な材料に対応可能

水圧カットとの比較

水圧カットは、高圧の水流を利用して材料を切断する方法です。厚い材料や硬い素材にも対応できますが、設備コストが高くなる傾向があります。一方トムソン加工は、薄い材料に適しており、コスト面で優位性があります。

水圧カットと比較した際のトムソン加工の特徴は以下の通りです。

・初期投資:水圧カットの1/5~1/10程度
・生産効率:1分間に20~30ストロークの高速加工が可能で、水圧カットの5~10倍の生産スピードを実現します。
・加工精度:±0.1mm程度の高精度な加工が可能で、水圧カット(±0.2mm程度)と比べて約2倍の精度を確保
・作業環境:水を使用しないため、加工後の乾燥工程が不要で、製品の即時出荷が可能


トムソン加工の用途

紙器や台紙の製作

トムソン加工は、紙器や台紙の製作に広く使用されます。高精度な切り抜きが可能なため、美しい仕上がりが求められる製品に最適です。

化粧箱やパッケージ製品

化粧箱やパッケージ製品の製造にもトムソン加工は欠かせません。複雑なデザインやカスタム形状に対応できるため、ブランドイメージを高めることができます。

POPや製品パッケージ

店頭ディスプレイや製品パッケージにもトムソン加工が活用されます。目を引くデザインや特殊な形状を実現することで、商品の訴求力を高めます。

絶縁系・フィルム部品

機器内外で使用される絶縁材やフィルム部品にトムソン加工が用いられることがあります。量産が必要な部品にも適しています。

トムソン加工のメリットとデメリット

メリット

高い精度とコストパフォーマンス

トムソン加工の最大のメリットは、高い精度で複雑な形状を実現できる点です。また、大量生産時にはコストパフォーマンスが非常に高くなります。

デメリット

初期費用とロット制限

一方で、木型の作成には初期費用がかかり、小ロットの生産には向かない場合があります。また、木型の耐久性には限界があり、長期間の使用にはメンテナンスが必要です。

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